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@なぜ生き返る設定にしたか 「ロミオとジュリエット」は、シェイクスピアの不朽の名作だが、今の時代に文化ホール事業として、そのまま上演することは好ましくない。主人公が2人とも、自殺で命を絶つ物語だからだ。 ロミオは絶望して毒を飲んで死に、仮死から目覚めたジュリエットは、剣で胸を突いてロミオの後を追ってしまう。今は青少年に命の大切さをいかに教え、自殺をいかに止めるかが叫ばれている時代だ。純愛の美しさを描いているとはいえ、若い2人が自殺して終わる結末では、行政や教育委員会が主催や後援をする自主事業企画としては、かなり抵抗がある。 そこで、このミュージカルでは、ジュリエットが両家の恨みや復讐の連鎖を断ち切ったことで、ロミオもジュリエットも生き返る奇跡が起こるという、ハッピーエンドのストーリーにした。そして両家が自らの誤りに気づいて和解することで、人が互いに許しあうことの尊さをクローズアップさせ、行政や公共団体が主催するにふさわしいテーマを持った、「ロミオとジュリエット」を作った。 この作品は、終曲のM32を「レクイエムからの復活」と題した。フィナーレではロミオとジュリエットだけでなく、決闘で死んだパリス伯爵やティボルト、マキューシオなど全員が生き返り、全出演者がそろって、ベートーヴェン第九の 「歓喜の歌」のような大合唱で幕となる。 愛しあう若い2人を死なせてしまった両家が墓場にそろい、重いレクイエム(鎮魂歌)の合唱で幕を閉じる、原作どおりの方法も確かにある。しかし実際これまで2005年に千葉県我孫子市と、2012年に愛知県豊川市で上演したところ、フィナーレの心地よさ、盛大な拍手を送りたくなる観客側の気持ち、カーテンコールへ移るときの観客の笑顔と感動は、明らかに大きなものだった。 |
A上演2時間のほとんどを歌とダンスで構成する効用 この作品は、仮にまったくセリフなしでもストーリーの展開が分かることをコンセプトに、全32曲で構成した。芝居のセリフは、あくまでも曲と曲のつながりを説明するための役割に収め、ドラマチックに進展するシーンは、すべて音楽ナンバーになっているのが、この作品の特徴だ。 その意味で、芝居の中に歌を散りばめたミュージカルでなく、完全に音楽中心のミュージカルといえる。 市民ミュージカルに出演者を集める場合に、歌や合唱の好きな人、バレエやダンスの好きな人、芝居の好きな人など、いろいろな方面に案内するが、実際に最も人口の多いのは、なんといっても歌・音楽であり、観客層の人口とも合致する。芝居中心の歌入りミュージカルよりも、音楽中心のミュージカルのほうが、より多くの人の気持ちにフィットする。 また大きな観点として、「ロミオとジュリエット」という愛の物語を、原作どおりにセリフで進めるよりも、歌で表現するほうがよいという点だ。「おおロミオ、どうしてあなたはロミオなの」という、ジュリエットの有名なモノローグ場面があるが、こうした愛のセリフを日本人が言葉で表現するには、かなりのプロの役者でないとむずかしい。 こうした愛のかけあいは、歌にしたほうがよほど気持ちがよいし、抵抗なく受け入れられる。「ロミオとジュリエット」を題材にした、米国の有名なミュージカル「ウェストサイド物語」では、バーンスタインの名曲「トゥナイト」が、トニーとマリアの出会いと愛のかけあいを歌い上げている。 芝居のセリフによる語らいよりも、やはり「トゥナイト」のほうが、素直に気持ちよく感じられる人が多いのではないか。 |
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